母親にとって、子どものアレルギーは大きな関心事である。第一子がアレルギー疾患を持っている場合や、母親のアレルギー体質が強い場合には、特に不安が強いようだ。生まれてくる子どものアレルギーを心配して、妊娠中に卵や牛乳を控える方がたまにいるが、実はアレルギーの予防効果は全くない。それでは、母乳を与えている方が食物を控えることは意味があるのだろうか。
確かに、母親がとった食物中の蛋白質が微量だが母乳中に検出されることがあるので、母乳で食物アレルゲンに感作される可能性がある。しかし、母乳には免疫を強くする多くの有効成分が含まれている。なかでも、分泌型IgA抗体は腸粘膜のバリアを増強させ、アレルギー反応を起こりにくくしている。そのため、アレルギー予防には授乳中の母親への食物制限は不要であり、むしろ生後4か月までは完全母乳が勧められている。
一方、乳児の食物アレルギーの診断が確定した時には、母親が卵1個や牛乳200mLなどを摂取して、その後母乳を与えて子どもの発疹などの症状をみることがある。症状が引き起こされる場合には、母親にも食物制限が必要だろう。ただし、母親には制限を最小限にとどめ、バランスのよい食事を指導することはいうまでもない。
最近では、バリア機能が低下した皮膚から侵入した食物アレルゲンによる感作が注目されている。確かに乳児は口の周りやほほに湿疹ができていることが多い。また新生児期から保湿剤を塗ることでアトピー性皮膚炎の予防につながるというデータもある。食物アレルギーの発症の予防は、食物制限せず母乳で育てることと、湿疹の治療やスキンケアを行うことである。
2016年7月24日