細菌性髄膜炎は、かつて小児科医の間で恐れられていた感染症だった。主な原因菌はヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib、ヒブ)と肺炎球菌。乳児期に多く、発熱、けいれん、意識障害、嘔吐などが症状であるが、早い時期に診断するのが難しく、治療が遅れると亡くなったり後遺症が残ったりした。そのため、小児科医は、日々の診療でも休日や夜間の急患当番でも、髄膜炎を見落とさないように気をつけてきた。
それが予防接種によって大きく変わった。日本でも、ヒブワクチンは2008年から、肺炎球菌ワクチン(7価)は2010年から接種できるようになり、ともに公費助成を経て、2013年から定期接種化された。その後、肺炎球菌ワクチンは13価ワクチンとなり、現在に至っている。細菌性髄膜炎は激減し、ヒブでは90%減少、肺炎球菌では80%減少というデータがある。
ところが、昨年出版された反ワクチン派の近藤誠氏の著書によると、ヒブワクチンは、小児科医療の発達した今日、ヒブ感染よりもワクチンによる副作用や死亡のほうが怖く、打つべきではないとある。肺炎球菌ワクチンも、肺炎球菌感染症で亡くなる人数より、打った場合の副作用死も多い、危険なワクチンとのこと。しかも同時接種は危険だとか、川崎病はワクチンの副反応だとか、小児科を全く知らない素人のたわごとがあふれている。
ヒブワクチンも肺炎球菌ワクチンも有効が高く、細菌性髄膜炎の減少に大いに貢献していることは明らかである。決して危険なワクチンではないので、2か月になったら接種を受け始めてほしい。きちんと受ければ、子どもが発熱しても細菌性髄膜炎を心配しないですむため、親にとっても小児科医にとってもメリットは大きい。
2018年1月15日