秦野市と伊勢原市の方は、4か月児健診をぜひ受けるべきだ。なぜなら、他の市区町村の4か月児健診にはない腎エコー検診を全員に行っているからである。そもそも腎エコー検診の始まりは平成2年(1990年)にさかのぼる。秦野保健所に赴任した泌尿器科医の岩室紳也先生が中心になり、秦野市と伊勢原市のバックアップによって、全国的に珍しい腎エコー検診が始まった。
この検診の目的は早期に先天性腎尿路奇形を発見することである。3歳児健診時の検尿では、腎尿路奇形の発見は難しいといわれている。実際には、腎エコー検診で腎尿路奇形が疑われた場合、精密検査の対象となる。小児腎臓病専門医がいる病院で再検査を受け、異常があれば通院となる。
これまで集められたデータによれば、約6万人が検診を受け、約1000人が精密検査を受け、約200人に腎尿路奇形が認められた。特に水腎症は見つかる頻度の高い疾患である。腎臓で作られた尿が流れにくくなり、腎盂(じんう)という部分が膨らむため、エコー検査で発見される。
さらに、精密検査により、膀胱尿管逆流が発見されることがある。膀胱と尿管のつなぎ目の異常により、膀胱にたまった尿が尿管や腎盂に逆流する異常である。発熱を伴う尿路感染症を起こすことがあると、抗菌薬の予防内服が必要になる。いずれも程度が軽いと自然に治る傾向がある。
一方で、高度の水腎症、膀胱尿管逆流の場合は手術が必要になる。こういった見極めは専門医が定期的に診るからこそ可能になる。少子化の時代なので、子どもの将来に係わる健診はとても大切である。両市の協力に感謝するとともに、継続をお願いしたい。
2020年1月5日